犀角(Diceros Horn) 2003

とくながの「書き散らかし」です

ここは研究・調査・開発などの記録がメインのページです。 日常の雑事、読書記録は はてなダイアリー の方に書いています。よろしければそちらもどうぞ。

Wed, 31 Dec 2003

企画力! (横山征次) 講談社現代新書

ビジネス・プロデューサーとして求められるものもさまざまなものがあるだろ うが、ここでは新しい企画を立ち上げて、ブランドを確立することを目標とし たプロジェクトを成功させるための秘訣について経験を交えて語っている。 プロデューサーは「王」であるよりも「司祭」であれという言葉は新鮮。 他にもセンスをみがく方法、テーマを見付ける発想法、メンバーの能力をうま く引き出す方法などが書かれている。正直、この手の本には余り興味がなかっ たのだ。どうせ書いてあることはどれも大差ない、と思っていた。確かにそう 言う面も半分くらいはあるが、著者の体験から得られたものを共有する ことで、自分の目の前のプロジェクトを客観的な目で見れると言うのが もっとも大きな効果かも知れない。

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Tue, 30 Dec 2003

今、日本の大学をどうするか (日下公人 他) 虎ノ門DOJOブックス

虎ノ門DOJOでの講演および討論の一部をまとめたもの。 最初の日下氏の文章にもっとも共感を覚える。

確かに大学教育は今多くの問題を抱えている。 国立大学法人化、大学の数と受験生の数のバランス、 学生の学力低下など。どれも一朝一夕で解決するものではないだけに、 文部科学省の制度改革で教育問題に安易にけりをつけることだけはやめてもら いたい。

この問題の奥深さは「大学教育」に対して望むものがそれぞれの立場によって 大きく異なるため、どのようなものを目指したとしても全体の賛同を得られな いところにある。むしろ一つの価値観で順位付けするようなことはせずに、 多様な価値観を認めあって、受験生、教員、卒業生の進路、それぞれに選択の 幅がひろがる方向に進んで欲しいものだ。

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Wed, 24 Dec 2003

セロトニン欠乏脳 (有田秀穂) NHK出版生活人新書

実はセロトニンについては全く知らなかった。 リラックスを司る脳内ホルモンであることはわかったが、 どれだけ信じていいのかがいまいちよくわからない。 セロトニン神経が弱ることとゲーム脳が関係あると言ったり、 セロトニン神経を活性化させるには、呼吸法が有効であると言ったり、 釈迦が修行によって得たことはセロトニン活性化の効用だと言ったりしている。 NHK出版もこんな本を出すのかと言うのがまず驚き。

著者は医学の基礎研究に従事する研究者なので、 臨床例なども多数出てくるのだが、理由をすっ飛ばして これはセロトニンが弱っているためです、あれはセレトニンが 活性化されているためです、などを繰り返す。 おそらく読者は自分のからだの症状も安易にセレトニンと結びつけて考えるよ うになるのではないか。

とはいうものの、自分の心の状態をコントロールする方法が分かれば、 素晴らしいことなのは間違いない。 呼吸法やリズム運動でセロトニンが活性化すると言うのなら 実践してみる価値はあるかも。

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Sun, 21 Dec 2003

ひらめきを富へ変える天才ひらめきをドブヘ捨てる普通人(シドニーショア)インターメディア出版

著者は著名な発明家。創造的な発想をするための秘訣を13の章に分けて 解説している。発明をはじめるきっかけとなる「不満」を楽天主義で 発明に結びつける。また他の技術をうまく移転する。それらの発想をするため のトレーニング方法を極めて具体的に記述してある。 柔軟な新しい発想をすることが大事だと言うことは、頭ではわかっていても その発想をする障害が無意識のところにあるから難しい。この本はその障害を 取り除くための処方箋を与えるもの。ただ科学的な根拠があるわけではなく、 一種の新興宗教のようにも読めてしまうので注意。

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Sat, 13 Dec 2003

カーマーカー特許とソフトウェア(今野 浩) 中公新書

数学は特許にならないと言うのが常識だと思っていたが、 線形計画法の一手法がアメリカで特許として認められたとのこと。 それがカーマーカー特許。特許を申請したAT&Tとカーマーカー氏の おかれた背景、特許制度の内包する矛盾点、数理科学の研究者の立場、 法律家の立場など、多くのエピソードを交えながら この問題を紹介。著者自身が日本の研究者の立場からこの問題に大きく関わっ たこともあり、複雑に入り組んだ問題点を抽出している。

最近もよく天文学的な特許侵害賠償金のニュースが報じられるが、 特許と言うシステムが発明のインセンティブを与えるものではなく、 政治的または経営戦略的に悪用されるものになりつつあるのは 残念。AT&Tはこの特許に関しては失敗した(まだ決着がついたわけでは ないかも知れないが)のではないかと思うが、 ソフトウェア開発のインセンティブを与えつつ、権利を保護する 社会的なしくみができて欲しいものだ。

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Sun, 07 Dec 2003

金鉱を掘り当てる統計学 (豊田秀樹) 講談社ブルーバックス

ニューラルネット、人工知能エンジン、自己組織化マップなど 様々な分野を例を用いて解説している新書のわりには内容豊富な本。 著者は心理学から統計学に進んだ人。そのため数学的な説明は少ないが、 かえって一般読者にはそれが好都合であろう。

データマイニングの本質が大量のデータの処理であるために、 例を説明する場合にあまりに少ないデータの処理では意味がなくなって しまうのが問題か。この本では、できるだけ大量のデータで説明しようとして いるが、その代わりにどのように結果が計算されるのかの説明は少なくなって しまっている。しかし、導き出される結果とその解釈については詳しく書かれ ているため、 データマイニングのそれぞれの分野でどういうことが可能なのかを 知るには最適の本。実際にデータ分析するには別の本をあたろう。

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Sat, 29 Nov 2003

情報量基準による統計解析入門(鈴木義一郎) 講談社

情報量基準を扱った数少ない一般の書籍。 読むのは第6章からでよい。 先を読む統計学 に比べて情報量基準による各種の分析の実例が多く紹介されている。 通常の分析と情報量基準による分析が並列して書かれているので、 情報量基準の能力の高さを実感できる。

残念なのは誤植が多い(数値の記述ミス)ことと、大文字と小文字の使いかたが 統一されていないこと。第6章の情報料基準の説明の部分もブルーバックスの ものと大差なく、より深い解説を期待していただけに物足りない。

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小説吉田学校 第二部党人山脈 (戸川猪佐武)

第一部が吉田派(自由党)からの視点で書かれていたのに対し、 第二部は鳩山派(民主党)からの視点で書かれている。 日ソ共同宣言が締結するまでの紆余曲折は、それぞれの政治家が どんな思惑を持って行動したのか、それがどのような影響を与えたのかが 克明に記され、当初些細なことと思われていたことが大きな影響を及ぼしてい たこともわかる。長期的な視点に立つ結果、直近のものに歪を生じさせたため に失敗してしまったり。交渉は土壇場での駆け引きでどちらにも 転び得るものだったり。優先順位を確立してその原則を曲げ ずに行動できること、最後の最後のぎりぎりのところで適切な判断が下せるこ と、これが偉大な政治家の条件だと言う気がした。

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Mon, 24 Nov 2003

マンキュー経済学I ミクロ編 (N・グレゴリー・マンキュー) 東洋経済新報社

いまさら学部生向けの教科書を読んでどうする、と言う突っ込みもあるかも知 れないが、総復習と頭の中の地図を作りなおすために通読。と言っても週末に 一章ずつ読んでいたら数ヵ月もかかってしまった。

今までの研究上、モデルの作成、抽象化の方向にかたより過ぎていたきらいが あるため、現実に即した理解を高めると言う目的では有意義だった。

著者はアメリカの著名な若手経済学者。ブッシュ政権でCEA委員長に就任。 ミクロよりもマクロ経済学の業績の方が多いし、教科書もそちらの方が定評が ある。他のミクロの教科書と比較したわけではないが、くどいぐらいの詳しい 説明、豊富な練習問題、ケーススタディなど、教科書としては十分高いクォリ ティを持っている。需要曲線と供給曲線がどの章にも頻繁に書かれ、それをも とに説明が展開する様は、ニュートン力学のように少ない基本原理を様々な問 題に応用して、複雑な現象を説明していくようなもので、気持ちがよい。ミク ロ経済学を批判する、もしくは発展させるものも、古典力学における解析力学か、 量子力学のようなもので、それによって古典力学の価値が下がらないのと同様、 ミクロ経済学の価値も下がらないだろう。

それにしても、世間一般の経済に対する認識が、いかに誤解が多いか。ケース スタディや表面的な数字のお遊びをする前に、原理を頭に叩き込んでおいて、 そういう発想ができるようにしておくことがいかに大事か。自戒を込めて。

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Sun, 23 Nov 2003

ザ・ヘッジ 回避 (幸田真音) 講談社

著者のデビュー小説。既に多くの経済小説を著しているが、 この小説は特に新鮮さを感じさせて、一気に読ませる。 ヘッジファンドを舞台として、ディーラの緊張感や 達成感、人間関係などが、現場出身の著者らしく いきいきと描かれていて、十分詠み手を楽しませてくれる。 ボスは、著者の理想が投影されていると思えるのだが、どうだろうか。

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Fri, 21 Nov 2003

小説吉田学校 第一部保守本流 (戸川猪佐武)

総選挙のころから読みはじめたが、やっと今ごろ読み終わった。

現代史をそれほど詳しく勉強したことがないせいか、 今まで知っていたことは、報道された記事からの 情報がほとんどであったことを痛感した。 政治家がどういうことを考えて、また行動をして、 その結果、報道を通して世間に知らされるものが何か。 国内世論、GHQ、反対勢力など対抗しながら、自分の信念を通して、 また時には複雑な条件下で妥協案をさぐる様がいきいきと描写されていて、 下手な政治ドラマよりも興奮を覚えた。

現代の政治家は信念を持っているのかなあ。

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Sun, 16 Nov 2003

アフォーダンス--新しい認知の理論 (佐々木正人) 岩波科学ライブラリー

不勉強にしてこの本を読むまでアフォーダンスと言う言葉すら、 よくわかっていなかった。人工知能やロボットで再び脚光を浴びている。 この本ではアフォーダンス理論を完成させたギブソンの思考をたどっていく。

従来の認知科学のモデルでは、人間は環境より刺激を受け、それを脳で処理し た結果が情報となる。一方ギブソンの理論では、情報は頭の中で作られるので はなく、知覚によって直接手に入れるものだとしている。脳は環境の中で 意味を持つ情報を探索しているのだと言う。アフォーダンスとは、環境が知覚 者に与える価値のこと。

この本には出てきていないが、よく言われる例は引く扉か押す扉かを 扉自身に語らせる例だとか、コンピュータのアイコンの例などがあげられる。 確かにアフォーダンス理論を、よく理解してユーザ・インターフェースの設計 などをするときに意識しておくとよさそう。 しかし、きちんと理解しないで使うと混乱のもとになるかもしれない。 あまり応用例にはなかったが「変形から不変なものが知覚される」原理は VRのインターフェースをどのように設計するかのヒントになりそう。 考えるきっかけにしてみよう。

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Sat, 15 Nov 2003

変化をさぐる統計学(土金達男) 講談社ブルーバックス

対話形式の「やわらかい」統計学の本。 導入としてはよいのだろうけど、この本を読んだから何かがわかると言うわけ ではない。もう少し突っ込んでほしかったな。もちろんブルーバックスなので、 こういうレベルの内容に需要があると言うことも理解しているつもりだが。

と言いつつも、3章のパス図、6章のニューロンネットワークの話題も少し触れてい るところはいい。

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Mon, 03 Nov 2003

スピングラスと連想記憶(西森秀稔)岩波講座物理の世界

このシリーズのなかでもひときわコンパクトな一冊。 だが、題名にある「スピングラス」と「連想記憶」 についてストレートな説明で、十分理解可能。

モデルの導入、メカニズムの説明、理論的解析と言う話の流れで、 エドワーズ・アンダーソン模型、シェリントン・カークパトリック模型、 ヘップ則、ホップフィールド模型などが解説されている。

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先を読む統計学(鈴木義一郎) 講談社ブルーバックス

いやはや。単なる統計学の本と思うなかれ。 この本のミソはIII章にある。そう、サブタイトルにもある情報量基準 の章である。この章だけでも680円の価値は十分にある。 いや680円では安いぐらいだ。この本の初版が1991年だが、 10年以上たった今でも、情報量基準を初心者向けの本で取り上げたのは 少ないのではないだろうか。ブルーバックスという形式上、 理論を深めずに、例による計算が中心になってしまっている(計算が中心とい うのもブルーバックスでは異端の部類かもしれない)が、 ここまでコンパクトにまとめているのだから文句は言うまい。 ただ、数式部分に誤植が多いのに注意。

III章の内容は「情報量基準」の説明。とくにAIC(赤池情報量基準) の計算方法の説明。推定、検定などの伝統的な統計学の手法とは別のアプロー チで、モデルの妥当性を定量的に検討しようとする手法。 ベイズ統計学にもよく登場していて、簡単な概説書を探してこの本に たどりついた。ひさびさのヒット。ベイズ統計学との関連は そちらのblog に書こう。

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Fri, 31 Oct 2003

例解データマイニング入門 (内田治) 日本経済新聞社

たまたま手に取った本だが、本当に入門。具体的なデータを使って分析手順は 書いてあるのだが、その統計的意味はあまり触れられていない。計算はコン ピュータで、といって結果のグラフはいっぱい見せてくれるけど、そのグラフ は結局どういう計算をして作っているんだ?と言う疑問には答えてくれない。

とはいっても、一通りの手法は紹介されているので、統計ソフトのマニュアル 片手にデータとにらめっこするときには使える本かもしれない。 大学教養レベルでSPSSやEXCELを使ってみましょう、と言う授業のサブテキス トとしてもいいだろう。 テキストマイニングの章があったので期待したんだけどなあ。

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Thu, 30 Oct 2003

年収300万円時代を生き抜く経済学(森永卓郎)

経済学の本かと思いきや、階級社会の本だった。 ニュースステーションにときどき出てくる森永さんが、 こんなことを考えていたとは。前半はとにかく小泉政権の 政策は階級社会を作るための陰謀だ!と言う話。 後半は、勝ち組になれなくても楽しく生きていく方法はあるよ、と言う話。

内容的にはトンデモ本に近いものを感じてしまうが、 面白かったので許します。そう言う見方もできるのか。

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Mon, 27 Oct 2003

人間にとって経済とは何か (飯田経夫)

貧乏を克服するのが経済の役割だとしたら、それがほぼ克服された今、 経済は何を目指すべきか、を問う本。と書くと聞こえはよいが、 経済学の本と言うよりも、経済学者の人生観の本と言う感じで 少しがっかり。

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巨匠が解く日本経済の難問(日本経済新聞社 編)

つまらない教科書的な本かと思ったが、いい意味で期待を裏切ってくれた。 現代の日本の経済学者が日本経済の抱える様々な問題に対し、 巨匠と呼ばれる人々の理論で考えると、どのように解釈できるか、 また処方箋は何かを、明解に述べられている。 個人的には久しぶりの経済関係の本のヒットだ。

特に理論からはいると、どうしても数式や定理などで理解しようとしてしまう が、このように説明されると、経済理論と経済政策が論理的につながってく る。

さらに歴史的に単純化された理論から、現実に近付けようとそれらが精緻化さ れていく様子、またそれに伴い解釈の違いから学派が形成されていく様子も 理解できる。現代経済も経済学史も学べるおいしい本。

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