犀角(Diceros Horn) 2005 08

とくながの「書き散らかし」です

ここは研究・調査・開発などの記録がメインのページです。 日常の雑事、読書記録は はてなダイアリー の方に書いています。よろしければそちらもどうぞ。

Wed, 31 Aug 2005

「失敗を生かす仕事術」畑村洋太郎(講談社現代新書)

失敗学の権威ともいうべき畑村先生の有名な一冊。 今ごろになって読んでいるのか、なんて言うツッコミは甘んじて受けます。

共感するところ、勉強になるところ、非常に多し。 決して精神論ではなく、失敗を冷静に受けとめて、そこから うまく定式化する方法、視野を広く持つことの重要性、 そして組織論、文化論まで。Failure Management のノウハウがつまっている。 成功から学ぼうとするのが、ともすればマニュアル主義、思考停止に陥りがちな ことを指摘して、「頭の三割はいつも冷静に」などの心構えを説くものから 「組織相手にはときに開き直るのも大事」などの行動指針を与えたりと、 失敗に対する様々な対処法を提案している。

と、いわゆる「失敗」にフォーカスを当てて読んでもよいが、 この本のあちこちにある挿絵の図のうまさに驚嘆した。 一つ一つの絵はいわゆるポンチ絵で、誰でも書けそうなものではあるが、 具体性と抽象性のバランスがよく、図には余計なものをそぎおとして 非常にシンプルな絵になっている。授業や講演などで何度も何度も同じような図を 書いたのだと思うが、概念としてすっと頭に入ってくる絵を書けるのは 訓練や試行錯誤があってこそだと思う。

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Sun, 28 Aug 2005

CFD の講義ノート

ネット上のCFDの情報を探してみる。まずは大学や研究所の 講義ノートや講演集など。

計算流体力学研究
理化学研究所
連続体力学講義ノート
京都大学
差分法による数値流体力学
国立天文台
Tso-Ren's Fluid Dynamics
Cornell 大学
いい時代になりました。勉強します。

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DigiMemo 買った

ACECAD と言うところがつくっている DigiMemo というおもちゃ(!)を買ってしまいました。 いわゆるタブレット方式のデジタルノートパッドと言うやつで、 特徴は

  • タブレット方式
  • 紙やノートを挟んで特製のボールペンで書く
  • 電池駆動
  • データは内蔵メモリかコンパクトフラッシュに保存可能
  • 用紙はA5サイズ
  • PCヘのデータ取込はUSB
  • データは独自形式だがPC上で変換可能
というもの。PCレスで使えるのがいいかなと思った。 でも慣れるまでうまく線が書けない。離したつもりが つながってしまったり。ちょっと訓練は必要かも。 1、2時間遊んでいたらだんだんコツをつかんできた。 筆圧をちょっと強めに書くとよいみたい。

親切な人が Converter for DigiMemo A501 と言うものを作ってくれて、独自形式のファイルを Postscript や PDF に変換できる。 便利です。

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Fri, 26 Aug 2005

「純愛時代」大平健(岩波新書)

岩波新書でも何冊も出ている精神科医の大平健さんの2000年に出た本。 いつもの大平節で雑誌の恋愛相談のような感じで読める。 題名には「純愛」とあるが、内容は恋愛関係で精神に異常を来たした 患者とのカウンセリングのケース集。それぞれのケースは非常に バラエティ豊かで、一つの傾向を出すと言うよりも、精神科医の立場では どのようなことに注目して話を聞いているのか、ということに 主眼がおかれた、淡々とした記述になっている。 それが余計な感情が入り込まずに読める一因だろうか。

著者もあと書きで「愛」をテーマにすることの難しさを述べているとおり、 確かにテーマが発散気味ではあるが、いわゆる恋の病として単純化されていた ことを、精神病を発病してしまった症例という極端な例を通じてではあるが 分析してあるのはとても面白かった。

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Tue, 23 Aug 2005

CFD 情報

いわゆる数値流体力学(CFD)に関する情報と、その応用分野を 追いかけてみようと思う。とりあえず ファーツィガー/ぺリッチの「コンピュータによる流体力学」 を読みはじめた。興味があるのは

  • 乱流
  • 格子気体法、格子ボルツマン法
  • 計算市場動力学
などなど。

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Sun, 21 Aug 2005

論文チェック

リー群上のハミルトン系のお勉強。 論文もチェックしておかなければ。 ちゃんとした論文は大学の図書館に行かないと手に入らないのが痛い。 プレプリントや著者が自分のサイトにおいてくれているものの中から 参考になるものを探そう。

The Motion of the n Dimensional Free Rigid Body
修論かな?Body and Space Coordinate について一通りまとまっている。
Lie Groups And Mechanics
内容は重複する。diffeomorphism のなす群に対して考察している。
Accurate and efficient simulations of rigid body rotations
剛体の数値計算エンジンをいろいろなアルゴリズムで実装して速度などを 比較している。とても参考になる。
まだまだ調べきれていない。続く。

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Sat, 20 Aug 2005

量子コンピュータ(竹内繁樹)講談社ブルーバックス

最近は量子コンピュータに関する本も増えて来て、 ブルーバックスにも一冊刊行された。 著者は(うーん、ほぼ同世代)量子コンピュータの実現 が専門の日本の研究者。そのため後半の光子を用いた量子コンピュータの 話などはかなり深いところまで紹介してくれている。

前半3章まではイントロと量子力学の復習。4章で量子ビット、量子ゲートなど 量子コンピュータの基本的な構成要素についての説明。 私が理論的なところに興味があるせいかも知れないけれど、 5章がこの本のキモだろう。ドイチュージョサの量子アルゴリズムや ショアのアルゴリズムをブルーバックスにあるまじき(?)詳しさで解説している。 ブラやケットの記号にクラクラするかもしれないが、ここのアルゴリズムを おさえておくのは重要。

6章から先は著者の専門なので、最先端に近い話がいろいろ出てくる。 NMRによる量子計算のアイディア、超伝導量子ビットなどなど。 ただどうしても詳しい話は省略されることが多い。まあ、さらなる専門書を 読めと言うことでしょう。

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Sun, 14 Aug 2005

チャット恋愛学(室田尚子)PHP新書

(まだまだ夏休み積ん読解消期間中です。)

チャットに対するネガティブなイメージを取り去りつつも、 問題点を冷静に提示しようとした本なのだろうが、それが うまく表現できているかはちょっと疑問。前半部分は チャットとは何かを歴史的に振り返ったり、現状を紹介していたりする ところで、わかっている人は流してよい。後半部分に著者自身の チャット体験を交えた感想とケーススタディが紹介してある。

オンラインで人格が変わると言う、オンラインペルソナの存在を 紹介し、その原因分析(「ほんとうの自分」を演じる、など)や、 チャットが恋愛感情が発生し易い土壌にあると言った分析は、 なかなか面白いが、事例や体験談になると、いわゆる「どこかで聞いた話」 っぽいエピソードばかり。ネットの外の住民なら読む価値はあるだろうが、 ネットの中の住民に取っては、もっとつっこんだ分析や、現実的な処方箋 がないと面白くないかも知れない。

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Thu, 11 Aug 2005

決断力(羽生善治)角川oneテーマ21

いわずと知れた将棋界最強の棋士、羽生善治の著書。 棋士が対局中に手を読むときに、どういうことを考えているのか、 何を判断基準としているのか、コンピュータで研究していると 強くなるのか、など素朴な疑問に答えてくれている。

中でも特に印象的だったのは、データに基づいて事前に研究をしていても、 あえてそこから外れるような手を打つ、ということ。選択肢を敢えて増やして 相手が混乱することを待つような戦い方に、本当に実力のある横綱相撲 のような強さの源泉を見た気がする。もうひとつ印象的だったのは、 集中するときに、徐々に段階をふんで深い集中に入って行く ということ。急に集中した状態に入れるわけではない、と考えてみたら 当り前のことだが、一般的には逆に集中力のある人には「集中する」 スイッチがあるように思われていることが多いと思うが、実際には そうではないということがわかって面白かった。

「才能とは継続できる情熱である」と。まったくもってその通り。 一流のプロスポーツ選手からも同じような言葉を聞く。 ただ凡人にはその境地に達するのは難しいですね。

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Sun, 07 Aug 2005

脳の中の幽霊(V.S.ラマチャンドラン、サンドラ・ブレイクスリー)角川書店

続編も刊行されているらしいので、今さらの感もあるのだが、積ん読解消のため 一気に読んでみる。いや、一気に読まされてしまいました。面白いです。

幻肢や脳の損傷などのために発生する不思議な症例を、異常なものや例外として みなすのではなく、そこから脳のしくみの深いところにまで考察が及ぶのは さすがである。幻肢、半側無視、盲点などの変わった症状のことをこの分野に 馴染のないものにもわかるように詳しく解説されており、そこから脳の現象として どういうことが起こっているのかを、話しことばで説明されているので、 素人でも難なく話の筋を追えるだろう。

話はさらに、宗教的恍惚や、モーツアルト、ラマヌジャンのような天才のような 一種の伝説として語られていたことに対しても、脳科学の分野からの説明を しようと試みる。もちろん完全な説明ができるわけではないので、研究の現状を 説明するにとどまるのだが、こちらが想像以上に進んでいる分野もあり、 わくわくさせられる。そのうち解剖学的やホルモン治療で数学や芸術などの潜在 能力を開花させることができたり、反社会的な異常行動と快感が結び付いて しまったような患者に対して医学的な治療ができたりするかも。ちょっとこわいかも しれないけど。

そして最終章には「クオリア」問題を取り上げている。最近は茂木健一郎さんが 盛んに取り上げているので、少しはメジャーになったかも知れないが、著者はここで クオリアの機能的な特徴を以下のように挙げている。

  • 入力側の変更不能性
  • 情報をバッファに保持
  • 出力側の融通性
脳の機能を計算機でシミュレートする方法はニューラルネットなど色々なものが 提唱されているが、クオリアを考えることで次世代のものを提案できたら 面白そうである。哲学の領域であった認知や意識の問題が、生物科学、情報科学の 分野にかなり近付いてきているのだと言うことが実感できた本。面白かった!

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Fri, 05 Aug 2005

帰ってきたもてない男(小谷野敦)ちくま新書

「帰ってきた」がついていない方も大分前に読んだ記憶があるので、 期待半分手に取ったが、はずれだったかもしれない。前書への批判に 対する反駁と、その後に出た小倉千加子や酒井順子の本などへの 意見を述べるにとどまり、目新しい意見、奇抜な意見はない。 これなら少し前に出た「オニババ化する女たち」の方が センセーショナルで面白かった。

スポーツマンがもてるとか、恋愛と結婚がセットになって結果として 晩婚化が進んだとか、出会い系サイトの実態とか、他のところでも十分 語りつくされたようなことを題材にしているのは残念。 ああ、逆にこの本に書いてあることが当り前で不思議ではないと思えると 言うことが「もてない男」の証明だったりするのかも。複雑。 とはいっても、著者は自分の恥をさらけだしてネタを提供してくれているのだから 文句は言えまい。期待したのはこの様な独白形式のエッセイではなく、 他とは異なる切り口による「もてない男」の分析をして欲しかった。 その結果得られる処方箋には、今までとは違うアプローチの方法があり、 晩婚化、少子化と言った社会全体の問題をも解決する糸口になるのでは、 と思ったのだが、期待しすぎました。 ある意味の自虐エッセイとして、あと書きに著者の求婚条件まで書いてしまっている いさぎのよさに脱帽します。

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Thu, 04 Aug 2005

天国の本屋(松久淳+田中渉)新潮文庫

最近乱読モードのスイッチがオンになったみたいで、 気になる本を手当たり次第読破中。といってもファンタジー小説 にまで手を出すとは。何年ぶりだろう・・・。あらすじを書いても 仕方ないので、読後感でも書く。

「天国」という小説の舞台としてはありきたりで、設定もそれほど 変わったところもなく、強いて言えば文体や登場人物の性格描写が 今風、というぐらい。筋も大体読めてしまう。と言っても否定的なのではなく、 読者の期待にうまく応えながらストーリーが展開して行くので、 決していやな感じがしない。かつて本好きの少年だったころの気持ちを 思い出させてくれる。たまにはこんな本もいいかな。シリーズ化されていて、 2004年には映画にもなったらしい。

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文科省が「平成16年度学校教員統計調査中間報告」を出している

各種統計情報(平成16年度学校教員統計調査中間報告)-文部科学省 というのが先日発表されたらしい。
関心があるのは、大学と産業界との人材移動、なのでそのデータをざっと見てみる。 採用前の状況別 採用教員数(大学等) を見ると、新規学卒者が1571人、官公庁民間企業などからの転籍が8617人、 といっても8617人のうちその他が4454人だから、ポスドクなどはここに 含まれるのかもしれない。 離職の理由別 離職教員数(大学等) には、定年で離職する人が3193人、転職する人が4171人とある。意外とお仲間は いるもんです。上の調査での新規学卒以外の採用者のその他を除いた部分も4000人台 半ばなので、産学の人材移動は毎年これぐらい発生していると考えればいいのかな。 人材移動は産から学への一方通行かと思っていたけど、そうでもないみたいですね。 社会人から大学院に進学して研究者になった人の追跡調査はある みたいだけど、大学から民間に転籍した人の追跡調査があれば、読んでみたいなあ。

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Tue, 02 Aug 2005

上機嫌の作法(齋藤孝)角川oneテーマ21

最近本屋でよく見掛ける齋藤孝さんの本。テレビにも出ているらしく、 いわゆる売れっ子らしい。本を読んだら納得。内容云々はおいといて、 わかりやすい、読みやすい、ポイントがまとまっている、と読ませる要素満載。 あっという間(小一時間くらい)で読了。ちょっと長めの雑誌の特集 位の感覚。こういう人を文才があると言うのだろう。
内容だが、不機嫌であることの無意味さを説き、上機嫌であることが コミュニケーションにおいていかに重要であるか、事例(上機嫌列伝)を もとに紹介。そして上機嫌をつくり出すためのノウハウ集。 気分をコントロールするってことは、わかってはいてもなかなか難しいが、 それを性格や生まれつきの問題ではなく、「技」だと言い切っているところが この本の面白いところだろう。著者自身「不機嫌」から「上機嫌」 に変化させていったということなので、 ここで紹介されている「技」の数々もやってみてもいいかな、と思わせます。

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Mon, 01 Aug 2005

「自閉症だったわたしへ」(ドナ・ウィリアムス)新潮文庫

自閉症というのは外部とのコミュニケーション能力に関する障害 であると考えられているが、自閉症の人の心の内面を幼少のころから 記憶をもとに詳細に記録したのがこの本。文体が読みにくくて、 読むスピードは遅くなってしまうが、それでも読み進まざるを得ない エネルギーを持っている。
障害を抜きにしても、著者の記憶の細かさ、どのような困難な状況においても 冷静に自分を見つめながら進む道を決めていく意志、表現することはできなくても 人の気持ちや環境に対する感受性の高さなど、ひとりの人間として圧倒される。
自分がどうしてそのような行動をするのか、どうしてそのような感情を持つのか などについて、普通の人とは少し回路が違っていても、 非常に事細かに分析されていて、決して内部では無意味なことではないと言うのも 伝わってきて、私のような心理関係の専門家でない人間にとっても多くのことを 考えさせるのに十分な一冊であった。

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